恋は思案の外
* * *
辿りついたその場所。時間にして二十分くらい。けれど、中々の運動だった。
沢山の車が停められた脇のもっと奥の隅っこらへんにハヤテ号を停め(ごめんね)、鞄を持ったわたしはするりと手動のドアを開ける。
「いらっしゃいませー」
「らっしゃーい」
チリンチリン、陳腐なベルが鳴く。それと重なるように向けられた挨拶。
軽い会釈を交えながらきょろきょろと視線を泳がせてみるものの、お昼時ということもあって席はほぼ埋まってしまっていて。
「お一人様ですか?」
「あ、は……はい」
突如として向けられた問い掛け。
身を乗り出して空席を探していたさなかだったため、思った以上に声が上擦ってしまった。恥ずかしい。
「カウンター席でしたら直ぐに御案内できますけど……」
どうします?なんて。
頭に巻いたバンダナがよく似合っている、このお店で何度も見たことのあるお姉さんが首を傾げてわたしを見つめる。
ちらりと視線を向けたカウンター席。
そうか。どうしてカウンター席も考慮に入れなかったのだろう。
お昼で混み合っているからこそ、寧ろそっちのほうがゆっくり食べられそうじゃん。
「お願いします」
鼻腔を擽るラーメンの好い匂いを吸い込みながら、ぐうと鳴るお腹を押さえ込んでお姉さんの背中に続いた。