恋は思案の外





「………ちょっとお姉さん、帰さねぇよ?」

「おかしいな。わたし、見ちゃいけないものが見えてる気がする」

「この瞬間を待ってたんだよ!お姉さんがスタッフとして見守るなか俺が走る!―――結婚へ……!!」

「だッから結婚しないって言ってんだろうが!」

「嫌よ嫌よも好きのうち、って言うもんな」

「もうやだこのヒト科」





ポジティブすぎる。むしろその脳内かち割って覗いてやりたい。

って言うか幾ら市民マラソンと言ってもその恰好はどうなの?いつもと大して変わらないじゃないか、寧ろシューズ新し過ぎるだろ。買ったの最近だろ、練習してないだろ。




「おねーさーん」

「纏わり付かないで。通報するから」

「ハッ、警察なんかに俺らの邪魔させるかよ」

「やばい。本格的に頭おかしい」







引き剥がそうとテントの中をぐるぐる駆け回るものの、然して意味を成していないことは直ぐに判った。

忠犬よろしくわたしの背を追い続けるヒト科相手に隠すこともなく舌打ちをかましてやる。









「なぁなぁ、お姉さんはどこの休憩ポイントに居んの」

「言うかカス」

「っていうか休憩所に居るよな?ちゃんと居るよな?」

「黙って走ってりゃいいだろ!」




こいつと追いかけっこ染みたことをしているせいで、ただでさえ消耗していた体力がエンプティーランプを点滅させ始めて。

て言うかこのヒト科、参加者の待機所に居るってことはマラソン出るんでしょ?大会前にこんなことしてて大丈夫なワケ?



尚も背後から追ってくるヒト科に視線を流すと、見なかったことにした筈のアレがわたしの視線をガッチリとホールドした。すね毛えええええええええ!







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