恋は思案の外



「……ーい! おねーさんってばー!!」






――い、いや違う!これは幻聴なんかじゃない!




「いやあああああ! すね毛ええええ!!!」




ホンモノだ!!

ホンモノのヒト科だあああああ!!!





「やっと見つけたよーおねーさーーん!!!」

「やめれ!見つけるな!こっち来んなああああ!!」




ひいいいい!!!

わたしのことなぞどうか探さないで放っておいてください――!






そんな心の祈りも虚しく、砂煙を上げる勢いで遠くから物凄い速さで迫って来るのは間違いなくあのヒト科だ。いや、むしろこんな迷惑なことするのはアイツしかいない。



はた迷惑な男、ヒト科は私の目の前まで超スピードでやってくると、キキーッとブレーキをかけるや否や、「よっ!」――片手で敬礼する。その語尾に☆でも飛ばしそうな爽やかさと陽気さをも自転車に乗せて。






ん?

自 転 車 に 乗 せ て ?









「って、アンタ何でチャリに乗ってんのおおお!!!!?」









そう。

ヒト科はあろうことか、自転車に跨っていたのだ。




いや、これマラソン大会だよね!?

みんな走ってるよね!?



自分の足で一歩一歩、確実に進んでいるよね――!?



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