恋は思案の外
* * *
そんな経緯もあってわたしは暫くヒト科と距離を置こうと決めていた。
決めていたんだ。これだけは譲れないって、妥協するつもりは更々無かった筈だった。
それなのに。
「なあなあ。いろはは何観たい?これ?戦隊もの?やっぱり?」
「………」
「最近のライダーはマジで馬鹿にできねぇよな?レベル高いっつーか何つーか……大人も子供も楽しめる?みたいな?」
そ、れ、な、の、に!
「じゃあこれでいいか?おーい、おーねーえーさーん」
「うるっさいな!!」
「そんな怒るなよ。あんまキレてばっかいるとババアになってからが恐――」
「問答無用」
「――ぐはッ…!」
目の前で崩れ落ちる物体X(ヒト科からの降格オメデトウ)を白けきった眼で見据えつつ、瞼の裏では店長を恨む。
傍迷惑な店長め!!
あの日。いつまでも駄々を捏ねるヒト科に困却したわたしたちを代表して勇気ある行動に出たのは、なんと草食系代表の店長だったのだ。
『浬さん。あのね……鳳さんとの二人分映画のチケットあげるから、お願いだから大人しくしてね』
そんなことを言いつつ渡されたのが、これ。
《○○レンジャーVS○○怪人 & ○○ライダーの秘宝》
おもいっきり指定されている映画チケットね!しかも特撮もの!並んでいるわたしたちの前にはズラァッと子どもたちが列をなしているワケで!
「なあなあ。なに観る?」
この列に並んでいる=戦隊ものを観るんじゃないのかよヒト科!
最早この男に突っ込んだら負けだとぐっと自分を抑えつつ、むきそうになる白目を必死で食い止めた。