恋は思案の外
――ふう。自分でも無意識のうちに重い溜息が漏れてしまった。
すると、今まで散々ユウヤとタクミとレンジャーについてアツい討論を繰り広げていたヒト科が、わたしの方に視線を寄越す。
それに「なによ」と言わんばかりに眉を寄せてヒト科を振り仰げば、ソイツは。
「いろは、こっち。」
そう言ってわたしの肩をぐいっと引き寄せて、前に並んでいるユウヤ・タクミとヒト科の間にわたしを置いた。
わたしより頭ひとつ分はゆうに高いヒト科が背後にいる。奴の体温さえ感じられそうなほど急に近づいたこの距離に、息が詰まりそうだ。
「ちょっと、手、どけてっ」
「ちっ、バレたか」
肩に置かれたままだったヒト科の大きくて武骨な手をしっしっと払い除けると、ヒト科は悪戯に笑うと降参ポーズをする。
「なあなあ。いろは姉ちゃんとカイリって、」
キッと奴を睨んでいる時に、遠慮がちに届いたその方へ振り返る。と、純粋無垢な4つの瞳がわたしを見上げていた。
ユウヤとタクミのその顔はさながら子犬のよう。可愛いな、なんてぽけっと思っていたときだった。
「ずっと気になってたんだけどさあ、付き合ってんの?」
――ピシリ。きっとわたしはそんな音を立てて硬直したに違いない。