恋は思案の外
な、なんなんだ。一体。次は何を言われるんだ、と身構えていると。
「やっぱお似合いだよ!」――やっぱ、って!お似合いって何だタクミ!!!
「結婚式には呼べよなー!」――だから!結婚しねぇっつーの、ユウヤ!!!
突っ込みができないくらい唖然として、間抜けなほど口をぽかんと開けているわたしに更に追い打ちをかけるのは。
「次の方、チケット拝見いたします」
荒れ果てたこの戦場でもきちんと仕事をこなす、疲れ顔の劇場スタッフの一言。
その声に吸い寄せられるように「あ、俺らだ」と、子どもふたりは嬉々としてチケットを渡す。
切り替えの早い子どもに呆れながらも、わたしもチケットを取り出して渡そうとしたのだが。
「大変申し訳ございません…。このお二人様でこの上映時間の席はいっぱいになります」
そう言われてしまえば。
「………。」
「あ?マジかよ!あとふたりくらいどうにかなんだろ!」
「も、申し訳ございません……」
まったく悪くない劇場スタッフに攻撃的なヒト科を横目に、上映シアターに走って行くユウヤ・タクミの背中を見送る他なかった。