恋は思案の外
ぶっちゃけわたしは暑さに滅法弱い。
だから日頃よりもかなり短気になる。
そんな中でこの意味不明なヒト科を目にしたら目に余るに決まっているわけで。
『お引き取り願えますか、この無精髭ヤロー』
ニッコリと洗練した笑みを貼り付けてヒト科にプレゼントしてやった。
しかしながら、そんなわたしの反応を目の当たりにしてもめげないのがコイツなわけで。
『まだ来たばっかじゃん、しかもジュースほら!ピッってして?』
『チッ』
なんて迷惑な往生際の悪さ。
耐えきれなかった舌打ちが飛び出した瞬間、どこからか店長の悲鳴が聞こえた気がする。
だって無理じゃん、相手がヒト科ですよ?
未知の物体Xに降格したもはや地球人とも認められないヤツですよ?
『ねぇねぇお姉さーん』
『チッ』
『明日予定ない?ねーだろ?だから俺と遊べるだろ?』
遊ぶってアンタその年でよく恥ずかしげもなく言えるな!(※いろはちゃんは短気になっています)
『だから明日俺と一緒にスイカ――』
『行かない。絶ッ対行かないから。はい98円です』
『あ、やっべぇ……財布忘れた』
『………』
『てへぺろ☆』
『……ピッ――"5番カウンター、至急店長お願いします。緊急事態です"』
コイツ何しに来たんだよ。
ゆらりと危ないオーラを撒き散らしていたらしいわたしは、店長にSOSを出す。
そんなヒト科とわたしの応酬を一部目撃していたらしいお客さんやパートのオバチャンたちは、『あらあら、今日も仲良しねぇ』と心外なる一言。
………コイツ吊るしてもいい?(※いろはちゃんは今..略)