恋は思案の外
慌てて駆け付けてくれた店長はわたしたち(主にわたし)のただならぬ空気に一度息を呑むと、代わりのオバチャンをカウンターに入れてヒト科共々引きずり出した。
そして連れて行かれた場所は事務所だったわけで。
『ちょっと、鳳さんわかってる!?暑いのはみんな一緒なんだから、そんなに不機嫌オーラ出してたら誰もスーパーに来てくれなくなるよ!?』
『はあ……すみません。でも、』
『とにかく呼んでくれて良かったよ。カイリさんも、あまり彼女を困らせないようにね?』
『困らせてねぇよ?店長、俺はいろはを口説いてただけだ』
『はぁ!?なに言ってんの!口説いてないでしょ!?て言うかテンチョー!!わたしが変な態度取るのなんてコイツ相手のときだけですから!その他はちゃんとしてますから!』
『うん、でもその様子を他のパートさんやお客さんだって見てるでしょ?鳳さんは勤めて長いし、みんな大目に見てくれてるけど……もうやめてね?』
『……はい。ごめんなさい』
『で、カイリさんは何を必死に鳳さんに訴えてたの?』
その店長の言葉にわたしは目を丸くした。
ヒト科が必死にわたしに何かを訴えてた?え……いつ?
目をしばたかせて見つめていれば、一度ニヤリと笑みを浮かべたヒト科はこんな言葉を吐き始めた。
『いやぁね店長、いろはがあんまり俺の誘いに乗ってくんねぇから悲しくて悲しくて……』
『そうなの?誘いって?』
『明日コイツ休みだろ?スイカ割りでもしようと思ったんだけど、中々強情でさぁ』
『スイカ割りィ?』
なにそれ。ヒト科そんなこと言ってた?
怪訝な表情に任せて首を傾げるわたしなんてお構いなしに、ふたりは会話を進めていく。
『だからさ、店長?できれば一緒にいろはを説得して欲しいんだけど』