恋は思案の外
神様よ、こういうときはもっとこう……ドラマチックな展開を用意してくれててもいいだろうよ。
会うのが二度目にも関わらず、まるで古くからの友人であるかのようにベラベラと話し掛ける男(ヒト科)を半ばゲッソリと見上げた。
――――にも関わらず、
「ねえ、だからお姉さんソレ、たぶんパンクしてるって」
「ッ」
急にこいつが屈んだことで埋められた距離と近付いた顔に、ドッコドコと早鐘を打ち始める心臓。
こんなに近くで見たのって、初めてかもしれない。レジを挿むと意外と距離ができたりするから。
思いの外整っている顔立ち。しかしながら、その格好がこやつの全てを抹殺していた。
ダボッと熟れたスウェットに、サンダル。ぼーぼーのヒゲ。
見なかったことに出来たらいいけれど、その健康サンダルはバックル部分が半ば取れかかっている状態だ。いやもう、サンダルちゃんが不憫でならない。
「アンタさ」
「え?」
「残念の極みだよね、もはや」
隣で不釣り合いなほど熱心にマイ・ハヤテ号を見てくれている男(ヒト科)は、心底残念そうな眼で視線を送るわたしを見て小首を傾げていた。