恋は思案の外
酒を呑むならひとりより多数
昼の陽気さから一変。
夕方になると急激に冷え込むその気温差に、すっかり秋を感じる今日この頃。
「さむ、」
17時にバイトが終わって裏口から外に出たわたしは、その寒さに身を縮こませていた。
今から家までの道程を15分~20分掛けて帰るのかと思うと、随分気が滅入る。
こんなことなら半袖にカーディガンじゃなくて、長袖にカーディガンを羽織るべきだったなあ。
「うっし、帰るかハヤテ号!」
自分の薄着具合と不用意さを恨みながら、愛車のハヤテ号に掛けていた鍵を外して、サドルをぽんっと1回叩き跨る。
そうしてゆるりとペダルを回して進み出した。
◆
いつも帰る道には河原がある。
問題児ばかりのクラスを受け持つ先生が主人公の、あの某ドラマのOPで有名な河原にソックリ。
そこに辿り着いたのは、バイト先からハヤテ号で5分程経った時だっただろうか。
ハヤテ号に跨って風を切って、すれ違うランニング中のお年寄りと挨拶を交わし、仲睦まじく泳ぐ鴨の夫婦を見て――いつもと変わらないその風景の中に。
「……………は?」
違和感ありまくりの存在が、ぽつりとあった。