恋は思案の外
「ヤダ。」
「えー!なんでだよ!」
その顔が癪に障って、わたしは間髪入れず溜息と共に吐き出した。
わたしがそう答えることは想像の域だったのか、ヒト科は大して驚きも落ち込みもせず軽い口調で返してくる。
「わたしにはハヤテ号がいるのでごめんなさい」
「なんだそれ。告白された時の断り文句みたいだな」
「わたしは今からハヤテ号と一緒に家に帰って、ビール飲んでスルメ食べて癒やしの時間を過ごすんだ!」
「家に帰って酒飲むなら今飲んだって変わんねーだろ!いいじゃねぇか!付き合え!!」
ひとりよりふたりだ!――ヒト科はそう言ってわたしにびしっとピースサインを向けてきた。
ホントにコイツは…!
アンタと一緒に飲みたくないっていう乙女心、いろは心を少しは察せ!!
向けられているその指をへし折ってやろうと思い、手を伸ばしぐっと力を込めれば、大げさに「痛い痛い!」と嘆くヒト科。若干涙目なのはコイツの演技だということにしておこう。
「いや飲酒運転になるから!捕まるから!ハンドルキーパーに酒飲ますの禁止!!」
「だーいじょうぶだって!俺オマワリさんとお友達だから!」
「意味分かんない!全然大丈夫じゃないしオマワリさんとお友達とか関係ないし!!」
「堅いこと言うなよ!なんならうちに泊まっていいし」
ヒト科のその台詞に、わたしは先程までの勢いをぴたりと止める。
泊まる、といえば。以前も台風のときにコイツの家に――