恋は思案の外
「“おおきくなったらショウヤのおよめさんになるー!”って言ってたじゃん」
「…………ハァ?」
え。ちょっと待って。
なにそのもう時効の約束は。
小さい頃のソレって別に深い意味とか本気とかで言ってるわけないじゃん!!
馬鹿なの?この人、ちょっと頭アレなの??
このオマワリさんもヒト科と一緒で、相当な脳みその持ち主なの!!?
「その約束を叶えるために俺はこの街に戻ってきたのに……っ」
「え、いや、ちょっとアナタ……、」
哀しそうな顔をしてしょぼんと肩を落とすオマワリさんに、もはや呆れを覚える。
そんなわたしの間抜けな顔をちらりと確認するや否や、オマワリさんは「そんな顔のいろはも可愛い」と言う始末。
その顔は先程の哀しそうな雰囲気とは打って変わって、どこか恍惚めいた表情だった。
ウワァ。
このひともう末期だよ。危ないよ。なんかもう別のイキモノだよ……。
「本当に覚えてないの?俺はずっといろはのこと――」
じりじりと後ずさり距離をとろうと目論んでいたわたしの行動なんかお見通しだと言わんばかりに、オマワリさんは素早くわたしの手首を掴んだ。
そしてそのままぐいっと自身の懐に入れるようにわたしのことを引っ張る。
「ずっと、追いかけてきたのに。」
ふと、わたしの顔に影がかかった。
徐々に近付いて来る綺麗な顔。桜色の薄い唇。柔軟剤の香り――
「ふざけんな。」