恋は思案の外






―――――――――――…



おおう、誰か。誰でもいいから、現状をわかりやすくわたしに説明してくれないか。



「着いたついたー、とうちゃーく」

「ねえ」

「え?」




ハヤテ号を押しながら歩を進めていた男(ヒト科)がピタリとその足を止めるや否や、わたしは片方の眉尻をピクリと動かしながら言葉を向ける。

そんなわたしの腕の中には、何故か紙袋が収まっていて。これってたぶん、パチンコか何かの景品だよね。まあどうでもいいけどさ。






「……わたしの愛車をどうする気ですか……」

「直してやるよ」

「へ?」

「俺の運命の相手だからさ、お姉さんは。だから特別に―――」






別に運命の相手じゃないけど!それ、アンタが勝手に言ってるだけだけど!

余っ程そう口にしたかったけれど、こういった類の台詞に後続する言葉はきっと「特別にタダで直してあげる」とかだろうから。


頭の回転が素敵スピード(小賢しいとも言う)なわたしはお利口に黙っていた。






ここまでの道中で発覚したのは、この男(ヒト科)が何と町のチャリンコ屋さんの店主だったってことで。

果たしてこやつにそんな大役が務まるのかどうかは疑問であるにしろ、お利口(小賢しい)わたしは思った。



もしもマイプリンス・ハヤテ号を破壊したら、そのときは慰謝料ぶん取ってやるからと。







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