恋は思案の外
聖なる夜に




先月の初雪から更に冬の寒さは厳しくなって、最近では毎日のように雪が降る。



12月。

この田舎町も、とうとう12月を迎えた。今年もあと1ヶ月も経たないうちに終わってしまう。



シャンシャン、どこからか鈴の音が聞こえる。「Merry Christmas!」、有名な某曲が響く。太陽が沈むと、何処からともなく暖かなライトが点灯する。


そんな赤、緑、黄色――…クリスマスカラーに染まった恋人たちの聖なる街並みを見ながら、







「お姉さん! クリスマスパーティするぞ!」

「98円になります」



わたしは今日も、スーパーのレジ打ちです。






「クリスマスパーティ!!」

「100円お預かりします」

「お姉さあああああん!!?」



いや、これを日常と呼ぶには甚だ遺憾である。

どちらかと言えば、日常の中に宇宙人が降り立ったような非日常と呼びたい。



「ねぇ、俺の話聞いてる?」

「2円のお返しです」

「お願い話聞いて!!? 会話をしよう、俺と!」



宇宙人というか宇宙から来たヒト科の生物である。もはや人ではない。

宇宙「人」?そんなの宇宙人に失礼だ。謝れ、ヒト科。



「ありがとうございました。もう二度と来ないでください(殺気)」

「おいいい!そこは『またお越しください!ニコッ』だろ!!?『かっこ さっき かっことじ』って何だよ!口で言っちゃう!?言っちゃうの!!?」

「お出口はあちらになります。さっさと逝け。」

「店長!いい加減マニュアル変えよう! 特にいろはの俺に対するマニュアル!!」



突然話を振られた、少し遠くで品出しをしていた店長は、愛想笑いと丸分かりな微妙な笑顔を浮かべていた。


“浬さんのこと、よろしくね”――神頼みよろしく両手を合わせ、わたしに懇願する店長の言葉がどこからか聞こえた気がする。



< 96 / 132 >

この作品をシェア

pagetop