恋は思案の外
「はぁ、もうわーったから。居ていいから。その代わり大人しくしてろよ」
「やりぃ! タクミ、ゲームしようぜ!」
「よっしゃ!今日は負けねーからな!」
「言ってる側から騒いでんじゃねぇよ!大人の話はよく聞けってかあちゃんに言われなかったのか!! あ、いろはこっちおいで。」
ぼうっと部屋を眺めていたら急に横から引っ張られ、ぽすんと腰を下ろしたところは何故かヒト科の膝の上。
ヒト科が胡座をかいたその場所に綺麗に埋まってしまえば、「おっ」と若干嬉しそうな声がして、後ろからぎゅっと抱き締められてしまった。
「お姉さんいいにおーい……―――ぶべっ、!」
「黙れこの変態。降ろせ。」
「頭突きは勘弁しろよー」
「いいから降ろせ!」
「えー、せっかくのチャンスだからヤダー」
「降ーろーせーー!!」
バタバタと体を捻り動かしてもヤダヤダ、と全く話を聞かず駄々を捏ねるヒト科。
傍に子ども2人がいるっていうのに!いい加減にしてほしい!いや確かにユウヤとタクミは手元のゲーム通信に夢中で見向きもしないけど!
あの、ねぇ2人とも、ちょっとこっち見てくれてもいいんじゃない!!?
その間にもどんどん強くなるヒト科の拘束。耳朶に掛かるヒト科の温かい息遣い。それらから離れようと、二度目の頭突きを喰らわそうとした直前だった。
「いろはーーーー!!!」
バァァァァン、と物凄い音を立ててスライドした四畳の襖。
あまりの勢いに襖は元の位置に戻ろうとしていたけれど、そんなことには気にも留めない開いた張本人は、わたしの姿を視界に捉えると猛突進してきた。
「んー、この柔らかい最高の抱き心地――…ハッ!すんげーいい匂いがする!」
そう、ストーカー警察(ショウヤ)だ。