セカンド レディー
別に、ガンをつけたわけでも喧嘩をした訳でもない。ただ、この人が、霜華の無神というだけ。
「おい」
変わらない低く冷たい声。
たった一言なのに、ドクンと全身が大きく脈打った。
「なぁに?」
一瞬の恐怖を隠すように、緩い口調で返す。そして、ニコッと、貼り付けたようなニセモノの笑顔を浮かべると、それに気づいたのか一瞬だけ顔を顰めた。
「ここはお前みたいなヤツが来る場所じゃねぇ。さっさと帰れ」
「帰ろうと思ったんだよ…。それなのに、あの人に声かけられて…。どう断ればいいか分からなかったの……」
なぁんてね。
泣き真似も、ウソにウソを重ねることも毎日している。
だからなのか、罪悪感は1ミリも感じなかった。