セカンド レディー
-流牙side-
「あたしに触らないで…っ!」
幹部室に入ろうとした時、突如聞こえた柚姫の叫び声。
いつもの冷静な声でも甘い猫なで声でもない。
酷く怯えた、震えた悲鳴。
「今の、柚姫ちゃんだよね…?」
後ろに立っている瞬も信じ難いと言わんばかりの表情を浮かべる。
「…柚姫?」
幹部室のドアを開けると、そこには、耳を塞いでうずくまり何かに怯える柚姫と唖然とする陽向の姿。
「柚姫ちゃん、その腕…」
右手と左腕は赤く染まり、"それ"は顔や服にも移っていた。
なんでこんなことに…。
目の前で起こっていることに、頭が追いつかない。
一歩、また一歩と、俺たちは柚姫に近づく。
「いや…、来ないでっ!いやっっっ!!」
あの柚姫が、こんなにも怯え癇癪を起こすなんて正直信じられなかった。
だけど今、その信じられないことが目の前で起こっている。