セカンド レディー
「柚姫っ」
通話が終了して、10分あまり。
ドンッと音とともに幹部室のドアが乱暴に開けられた。
「柚姫…」
俺たちの存在なんて見えていないかのように、ソファで眠る柚姫の側に歩み寄る。
そして、大切なものを扱うように優しく抱き上げると、部屋に連れていった。
「……おめぇら」
幹部室に戻って来た兄貴は、今までに見たことがないぐらい怒っている。
ゴミを見るような冷たい表情。
殺気混じりの低い声。
グッと下唇を噛み締め、次に言われる言葉を待つ。
「…俺が、悪いんです」
室内に響く、陽向の低い声。
「ただいまー」
タイミングが良いのか悪いか、コンビニから帰ってきた魅斗。
「…ってあれ?優牙さん、こんにちは」
この空気の重さに気づかないあたり、ある意味強いと思う。
「説明しろ」
魅斗の言葉を無視し、ソファにドカッと腰をかけて陽向を睨みつける鋭い眼。
その視線は間違いなく陽向に向けられたものだが、恐ろしい程全身に突き刺さる。
「…────というわけです」
先程あったことを説明する陽向。
柚姫は何かを抱えいる。
"ただの猫被り"
"ただの遊び人"
それだけですむような簡単な話じゃない。そんなの、あいつと出会った時から察してる。
だけど、
"踏み込むな"
あいつの表情が、そう語っていたから敢えて何も聞かずにいた。
それを陽向は容易な気持ちで踏み込んだ。