セカンド レディー
「柚姫からは何も聞いてない。ただ、あいつが抱えてるものは他人が憶測で語れるほど軽いもんじゃねぇ」
軽いもんじゃない
そんなことは分かりきってる。
俺は知りたいのは…。
「柚姫は確かに仮面を被ってる。けど、その仮面は1つとは限らない。違う仮面を見せられた時、それを裏切りととるか信頼ととるかはお前ら次第だ。
ただ、判断を誤れば柚姫は簡単に壊れる」
そう口にしたあと、「二度目は無いからな」と釘を刺し柚姫が眠る部屋に向かった。
幹部室に戻ってきた兄貴の腕の中には、苦しそうに眠る柚姫の姿。
兄貴は、何も口にせず柚姫を連れて部屋を出ていった。
2人が出ていった幹部室は重たい空気に包まれる。
「…俺のせいで、ごめん」
しばらくの沈黙後、陽向の口がゆっくりと動いた。
「謝るなら俺らじゃなくて柚姫ちゃんに謝りな」
「そう、だよな…ごめん」
「ゆったん、戻ってきてくれるよね…?」
ここにいる誰もが思ったこと。
思っているにも関わらず、あの時兄貴に訊くことは出来なかった。
今の俺らに、それを訊く資格なんてないから。