セカンド レディー
放課後、あたしは約束通り空き教室に向かった。
そこには既にみんな揃っており、あたしはいつも座っているソファに腰を下ろした。
「柚姫ちゃん、はいどうぞ」
瞬くんはコップに入ったアイスココアを、目の前の机にコトンっと音を立てて置いた。
「…ありがとう」
穏やかな表情を見せる瞬くんだけど、空き教室は不穏な空気に包まれている。
まぁ、原因はあたし達だけど。
「柚姫ちゃん…」
普段は見ない陽向くんの暗い表情。
あの日とはまるで別人だ。
「柚姫ちゃん、本当に申し訳なかった」
深く頭を下げる陽向くん。
陽向くんは、踏み込んではいけないところに踏み込んだ。
触れられたくないことに軽率に触れた。
だからね、
「二度とあたしの事もママのことも探らないって約束して」
許すとか許さないとか、そんな話じゃない。
あたしにとっては、どんな謝罪の言葉であろうと意味がないもの。
「え?そんなあっさり…」
「柚姫ちゃん、もっとガツンと言っていいんだよ?」
あまりにもあっさりしてるあたしに口を挟む2人。
だけど、責めたいわけじゃないから。
それに、陽向くんはここが大切で、この場所を守るためにしたって分かってる。
「…分かった。約束する。今回は、本当に悪い事をしたって思ってる。謝って済む「やめて」」
陽向くんの言葉をわざと遮る。
「謝って欲しいわけじゃないから」
トーンを下げ、低く冷たい声で発する。