セカンド レディー
「あたしの言葉に事実なんてない。陽向くんが言った通り、親のことは嘘だよ。けどね…」
あたしはカバンの中から鍵のかかった手帳を取り出すと、両腕でギュッと抱きしめる。
キャラメル色のシンプルな手帳は、何年も前のもので少し傷んでいる。
だけど、あたしにとって一番の宝物。
「ママのことは本当だよ。あたしと同じミルクティー色の髪も優しいところも…」
髪をクルクルと指に絡めながら口にする。
醜くてたまらないこの容姿も、この髪色だけは好きでいられる。
「陽向くんの言葉は正しいのかもしれない」
事実、"あの日"を境にママもあの男も姿を消した。
だけどね、
「あたしはママのことを信じてるから」
たとえ罪を犯したとしても。
それは、ママなりのケジメであり、あたしを守るためだって。
だからこそあたしは、何があってもママのことを信じるし味方でいたいんだ。
それは誰かの言葉で簡単に左右されるほど軽い気持ちじゃない。