セカンド レディー



「…1回、落ち着け」



ふわっと優しい香りで包み込むように、流牙くんはあたしのことを力強く抱きしめた。


彼のその低い声は、不思議とあたしの中にすっと解けていき、あたしの心を落ち着かせた。



…なに、この変な気持ち。

憎いはずの、大っ嫌いな男に対するこの感情の正体は…。


だけどあたしは以前、男に対して、この感情を一度だけ抱いたことがある。


…あの時と同じ、安心と温もりと優しさ。



そして…………。



「軽はずみな気持ちで言ったわけじゃねぇことは分かってる…。だけど、いや…だからこそ、お前の命は俺が預る。生かすも殺すも、俺次第だ」



耳元で囁かれた声は、あたしの中に残っている先程までの男とは違い、気持ち悪さを感じさせなかった。


流牙くんは小さい子どもをあやすように、震えるあたしの体を優しくさすった。


どうしてだろう…。

大っ嫌いなはずなのに、嫌なはずなのに、安心感を抱く。


その安心感が心地よくて、あたしは流牙くんに体を預け、そっと目を閉じた。

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