セカンド レディー
「悪い。俺出てくるけど、1人で平気?」
魅斗くんもそうだったけど、電話の後はどこか落ち着きがない。
…みんなも、忙しいのかな。
「うん、大丈夫だよ。いってらっしゃい」
にっこん微笑んで見送る。
やっぱりそう、朝までいてくれるかもだなんて…そんな期待、泡のように消えていく。
「すぐ戻ってくるから」
大きな手があたしの頭に優しくのせられた。
「…うん」
虚しさと温かさ。
反対のものが交互に与えられる。
だけど、いつも温かさの方が心に残って期待してしまうんだ。
シーンと静まり帰った一人ぼっちの幹部室。
男用のスマホの電源を入れると、何件かメッセージが同時に届いた。そのメッセージを確認することなく、画面の光を落とす。
男が求めるのは完璧なあたし。
それを捨てたら何もない。
そんなこと、分かってるのに…。
ここを出ていく日は、きっと流牙くんがあたしを殺してくれる日。
だからこそ、あたしはこの生き方に終わり(カタ)をつける。
「…さよなら」
キッチンに足を運ぶとシンク置かれた、水の張っている洗い樽の中に"それ"を沈めた。