セカンド レディー
「柚姫ちゃんって、ちょっとのことですぐ噂になるよね〜」
お昼休み、空き教室に入ると、あたしの顔を見て面白そうに笑う瞬くん。
「3年の教室まで話来たよ〜。男とのカンケー、切ったんだってね。遊び人卒業おめでとう」
噂って…。
そんなことか。
「行き場所が無い時、"特定の人をつくって浮気になるなら、特定の人はいらない"。カンケー持つことに疲れた時は"特定の人をつくって遊ばない"。明らかに彼女いる人には"あたしから誘わない"。あたしの中では、ケジメみたいなものがあるんだよ」
所詮周りからすれば、あたしはただの遊び人。
言いたいやつには、勝手に言わせておけばいい。
だけど、どれだけ噂されてもあたしはあたしなりのケジメを付ける。
"遊ばない"
そう宣言したからには、あたしは二度と男とカンケーを持たない。
「ていうか、お腹すいたんだけど。それ、食べてもいい?」
「どーぞどーぞっ!何がいい?色々あるよ」
「パニーニと…その、パン、なに?」
あたしが指さしたのは、真ん中に黒いベリーのようなものが3つ乗っているデニッシュ。
「ブラックチェリーだったと思うよ」
「じゃあそれも。あと、お茶も欲しい」
あたしが口にしたものを瞬くんは、嫌な顔ひとつせず、手に取り「はい、どーぞ」と笑顔で渡してくれた。
「…ありがとう」
受け取ったパンをあたしが座るソファの隣に置く。