セカンド レディー


「少しだけでいいの。お願い」


チラッと唯花の方に視線をやると、「私、先に帰ってるから、先生と話して来なよ」と笑顔を向けられた。


「…少しだけなら」



あたしたちは面談室に向かった。



「何かね、悩んでることあるでしょ?」



優しく訊ねる先生の言葉に、少しだけ期待した。


もしかしたら、あたしたちを助けてくれるかもしれない。だからこそ、あたしは…



「先生!ママを助けて…っ!」


藁にもすがる思いで助けを求めた。


だけど……



「違うでしょ?あのね、学校で嫌がらせを受けてるって聞いたんだけど、本当?」



そんな期待は、簡単に消えた。




「…誰から聞いたの?」


告げ口したのはクラスの誰か。




「そのこと、ご両親には話した?」



先生は、あたしの質問を無視して別の質問を投げかける。



「もし、伝えていなかったらいいんだけど、話していたらね、解決したから大丈夫だよって伝えておいて欲しいの」



…え?


目の前にいる先生の言っていることが理解できない。



それって…



「ほら、先生もね今年来たばっかりだから、保護者の方が不安に思うことも多くって…それでいじめがあるなんて知られたら、先生の立場として困るのよ」



あぁ…。

やっぱり。


あたしの予感は見事的中した。





「あたし、ママには学校のこと話すつもりないから」


家の事でいっぱいいっぱいなの。


学校でのいじめなんてあたしからしたら大したことないし。



「良かった。如月さんが物分りのいい子で助かったわ。それじゃ、また明日」



そう言うと、先生はニコニコ笑いながら面談室から出ていった。




< 217 / 297 >

この作品をシェア

pagetop