セカンド レディー
「少しだけでいいの。お願い」
チラッと唯花の方に視線をやると、「私、先に帰ってるから、先生と話して来なよ」と笑顔を向けられた。
「…少しだけなら」
あたしたちは面談室に向かった。
「何かね、悩んでることあるでしょ?」
優しく訊ねる先生の言葉に、少しだけ期待した。
もしかしたら、あたしたちを助けてくれるかもしれない。だからこそ、あたしは…
「先生!ママを助けて…っ!」
藁にもすがる思いで助けを求めた。
だけど……
「違うでしょ?あのね、学校で嫌がらせを受けてるって聞いたんだけど、本当?」
そんな期待は、簡単に消えた。
「…誰から聞いたの?」
告げ口したのはクラスの誰か。
「そのこと、ご両親には話した?」
先生は、あたしの質問を無視して別の質問を投げかける。
「もし、伝えていなかったらいいんだけど、話していたらね、解決したから大丈夫だよって伝えておいて欲しいの」
…え?
目の前にいる先生の言っていることが理解できない。
それって…
「ほら、先生もね今年来たばっかりだから、保護者の方が不安に思うことも多くって…それでいじめがあるなんて知られたら、先生の立場として困るのよ」
あぁ…。
やっぱり。
あたしの予感は見事的中した。
「あたし、ママには学校のこと話すつもりないから」
家の事でいっぱいいっぱいなの。
学校でのいじめなんてあたしからしたら大したことないし。
「良かった。如月さんが物分りのいい子で助かったわ。それじゃ、また明日」
そう言うと、先生はニコニコ笑いながら面談室から出ていった。