セカンド レディー



「ただい…「浮気してんだろ…っ!」」




帰った途端、リビングから聞こえてくる声。


…遅かった。


「ママ…!?」


急いでリビング行くと、何度も殴りつける男と血を流し倒れているママの姿。


「…ママに何してるの?」


目の前で起こっていることに頭が追いつかない。


「お前らは、俺の言うことだけきいとけばいいんだよ。それすらも出来ねぇのか?あ"?」


あたしの存在を無視し、ママに手を挙げ続ける男。


「やめて!これ以上ママを傷つけないで…お願いだからもうっ…!」


涙を流しながら、必死で男をとめる。



「引っ込んでろ!お前に手出すとこの女がうるせぇんだよ!」


鋭い目付きであたしを睨み、怒鳴りつける。


その迫力に、思わずあたしの体は震えた。


「…柚姫」


小さな声であたしの名前を呼ぶママ。


「…ママ?」


ママのそばによると、そっと手を伸ばしあたしの頬に触れた。




「…大丈夫だからそんな顔しないで」


そう呟いて、にっこりと微笑んだ。

なんで、笑っていられるの…。


こんなに傷ついて、酷いことされて…。




「あたし、絶対助けるから…待ってて」



あることを心に決めて、あたしは家を飛び出した。



「誰か、誰か助けて!!」


外に出ると、大声で助けを求めた。



幸いなことにあたしたちがすんでいるところは住宅地。

近所にはたくさんの人がいる。


だから、絶対助けてくれる人がいる。そう信じて叫び続けた。


それなのに…


「誰か…」


なんで?

どうして誰も助けてくれないの…?


家から人が出てくるどころか、あたしが騒いでいるのを見て家に入る人ばかり。

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