セカンド レディー
「たすっ……けて!」
息を切らしながら助けを求めたのは近くの交番。
そこには、中年のおじさんがひとりいた。
この人なら、きっと…。
「きみ、どうしたんだい?」
「助けて…!ママが死んじゃう!」
「それはどこで「こら、柚姫、お巡りさんに迷惑かけたらダメだろ」」
突如現れたあの男。
「すみませんね、うちの娘がご迷惑をおかけして。妻が椅子から転落してしまい頭を打ったんですよ。突然の出来事でびっくりしたみたいで」
はははと、笑いながら警察の人に話す男。そんな嘘、信じるわけ…
「そうですか、奥さん大丈夫ですか?」
え、なんで…?
そんな言葉嘘に決まってるじゃん。
ママはこの男に…
「ええ、お隣さんにお願いして念の為病院へ向かいました。これから私達も病院へ向かおうと思います」
「そうですか。お大事になさって「ちがう!ママはこの男に…!」」
「妻が使っていた椅子にぶつかってしまったんです。だから娘は私のせいだと。とんだママっ子で困ったもんです」
ちがう、ちがうちがう…!
この男が、この男がママを傷つけたの!
お願いだから信じて…
「ほら、帰るぞ」
手を握られ、強引気味に手を引く。
どうして、どうして誰も助けてくれないの…?
「…ったく。次余計なことしたらどうなるか分かってるよな?お前らに逃げ場なんかねぇんだよ」
手を離し、鋭い目付きで睨みつける。
「柚姫ちゃん、大丈夫だった?」
1人、とぼとぼと家に帰っていると近所のおばさんに声をかけられた。
「さっき叫んでたでしょ?おばさん洗濯物取り込んでたからちょうど聞こえたのよ」
その言葉に吐き気がした。
ママよりも洗濯物?
聞こえたなら助けてよ。
心配してるフリで探ってきて。どーせこの後、近所のおばさん達と噂話で盛り上がるんでしょ?
「黙れよ!クソババアが!」
この日、
あたしの中で何かが崩れた。