セカンド レディー
ここに来て2週間が過ぎた頃。
最初は学校へ行くように言っていたけいちゃんも、今では何も言わなくなった。
そして、日に日に会話は減っていき、今では全く会話をしない。
「ご飯できたよ」
「お風呂入りな」
と、声をかけてくれることはあるけれど、あたしは返事を一切しなかった。
何も考えず、誰とも話さない。
ただ、ぼーっとして過ごす毎日がすごく楽だった。
「柚姫、ちょっといい?」
「…なに?」
お風呂上がり声をかけられ返事をする。
久しぶりにする会話。
「母さんから連絡あって、帰ってこいって」
なにそれ…。
追い出したあとは帰って来いって。
自分勝手すぎるでしょ。
「俺もさ、夏休みなったら1回実家に帰ろうと思う。だから柚姫も一緒に帰らない?」
本当は帰りたくない。
あの夫婦がいる家なんて…。
だけど、けいちゃんも一緒ならほんの少しだけいいと思った。
「柚姫ちゃんおかえり」
おばさんの家に行くと、あたしたちを出迎えたのはあの男だった。
けいちゃんは丁寧に対応していたけど、あたしは男の声を無視して、あたしの部屋だった場所に向かう。
ここを出たのは1ヶ月も前のはずなのに、何も変わっていない部屋に少し安心する。