セカンド レディー


ここに来て2週間が過ぎた頃。


最初は学校へ行くように言っていたけいちゃんも、今では何も言わなくなった。


そして、日に日に会話は減っていき、今では全く会話をしない。


「ご飯できたよ」


「お風呂入りな」


と、声をかけてくれることはあるけれど、あたしは返事を一切しなかった。


何も考えず、誰とも話さない。


ただ、ぼーっとして過ごす毎日がすごく楽だった。




「柚姫、ちょっといい?」


「…なに?」


お風呂上がり声をかけられ返事をする。


久しぶりにする会話。



「母さんから連絡あって、帰ってこいって」


なにそれ…。

追い出したあとは帰って来いって。


自分勝手すぎるでしょ。



「俺もさ、夏休みなったら1回実家に帰ろうと思う。だから柚姫も一緒に帰らない?」



本当は帰りたくない。


あの夫婦がいる家なんて…。


だけど、けいちゃんも一緒ならほんの少しだけいいと思った。




「柚姫ちゃんおかえり」


おばさんの家に行くと、あたしたちを出迎えたのはあの男だった。



けいちゃんは丁寧に対応していたけど、あたしは男の声を無視して、あたしの部屋だった場所に向かう。


ここを出たのは1ヶ月も前のはずなのに、何も変わっていない部屋に少し安心する。



< 258 / 297 >

この作品をシェア

pagetop