セカンド レディー
「病院いくか?」
背中をさする大きな手。
お願い…あたしに触らないで。
体に残る男に触れられた時のあの感覚。
…気持ち悪い。
「大丈夫だよ。今日さ出かけるって言ってたじゃん。早くしないと遅れちゃうよ」
無理やり作る笑顔。
お願いだからひとりして。
男の顔なんて見たくない。
何も考えたくない。
笑いたくない。
色々な感情が、あたしを完璧から遠ざけた。
「体調崩してるやつ置いて出かけるほど、俺もクズじゃねぇ」
蓮は軽々あたしを持ち上げると、ベッドまで運んだ。
「…無理して、笑うことないからな」
優しく投げかけられた言葉。
蓮にこの言葉に言われたのは二度目。
一回目はあたしがここに来た日。
その時は笑って誤魔化したけど、今のあたしにとっては、心を軽くさせるのに十分すぎる言葉だった。