セカンド レディー



「おいっ」



大きく一歩踏み出した時、踏み出した方とは逆の方に引っ張られた。




「…死ぬ気?」



愚問だ。



「やだなぁ。そんなことするわけないじゃん」


だけどあたしは、目の前にいる男に笑って答える。



「ちょっと疲れててボーッとしちゃってた」




なんで…。


あたしが、こんなに笑ってるのに。


仮面被って、愛想振りまいて。


"男に愛される如月柚姫"を演じきれているはずなのに…。



目の前の男は顔色一つ変えず、あたしを見る。




やめて…。


そんな目であたしを見ないで。







「…アンタには関係ない」


俯き、低い声で呟く。


あたしが男に対してこんなふうに接するなんて、何年ぶりだろう。

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