セカンド レディー
男たちは、怯えながら逃げ去った。
「なぁ」
あたしに向けられた、無愛想な低い声。
あの男たちがこの人に恐怖心を抱いていたように、あたしも恐怖心があるのか、ビクッと身体が震えた。
「なぁに?」
その恐怖心を隠すかのように、平然を装う。
だけど、そんなものなんの意味もなくて。
「話がある、来い」
そう言って、あたしの手を取り引いた。
その手は、先程男の腹部に拳を入れた乱暴な手。その手で一体どれだけの人を傷つけたのか。
「…いや」
喉から絞りだした微かな声。
男の足がピタリと止まった。
「やだ…っ!離して!」
男の手を勢いよく振り払うと、その反動でみごと後ろに倒れた。
この人はあの男じゃない。
そんなこと分かっているのに……。
「おい、大丈夫か…?」
眉間に皺を寄せ、睨むような目付きであたしを見下ろす。
「…来ないで」
その言葉を無視するかのように、男はあたしに手を差し伸べる。
殴られる…っ!
そう確信した時、あたしは意識を手放した。