セカンド レディー

「全く、俺も舐められたもんだな」


本当にこの男は、さっきの男と同一人物なんだろうか。

先程までの彼は、誰かの上に立つ強い男と呼べる。ただ、今目の前にいるのは、普通のどこにでもいる男の人って感じ。



あたしみたいに、演じているとかそういうものは一切感じさせない。両者とも素の彼だからこそ、よく分からない。



「…あたしもう行くね」


「だから待てって」


今度は、掴まれることは無い。

逃げようと思えば、簡単に逃げられる。



だけど、彼の言葉に自然とあたしの足は動くことを辞めた。



「なんかさ、ワケありなの?」


「なんのこと?」



くるっと振り返ると、笑顔で訊ねる。



「別に、そんな気がしただけ。あとその笑顔、なんか嘘っぽい」


…っ!


なんなの、こいつ…?


何も知らないくせに、まるで全てを知っているような口調でいうから、やけに腹がたった。

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