犬猫ポリスの恋日常
千歩が口籠っていると、気を利かせた女性刑事が秋人を呼ぼうと彼の姿を探し始めた。
「あっ、猫――…」
「いいです!いいです!大した用じゃないので、また出直します」
彼女が秋人を呼びつけてしまう前に、千歩は食い気味でその厚意を断る。
千歩の圧に押されて、呼びつける気満々だった彼女も「そお……?」と引き下がった。
「お忙しいところすみませんでした。お仕事頑張って下さい。失礼します」
千歩は丁寧にお辞儀をして刑事部を後にする。
刑事部の扉が閉まる直前、「被疑者確保!」と男性刑事の声が響き渡った。
ここは戦場だ。
いつもなにかと言って騒がしい。
今日は帰りが晩いかもね……
バレンタインどころじゃないもの。
ディナーなんて夢のまた夢。
千歩は結局のところ、自宅から持ってきたチョコレートを再び自宅へと持って帰る結果になったのだった。