犬猫ポリスの恋日常

あの時と同じくらいの破壊力。

こんな姿、一緒に働く女子たちにはとても見せられない。

警察官とは言え、一発でノックアウトだ。

「千歩、よく似合ってる」

「……それはどうも」

見目麗しい秋人に言われたってなんの慰めにもならない。

「ほら、二人とも早く行っておいで」

「はーい」

千歩はもう自分の浴衣姿など諦めて、さっさと玄関へ歩いていった。

玄関には二人分の下駄が準備されている。

「お父さんのお土産も忘れないでね」

「分かりました」

千歩は夏祭りに出向く前からテンションガタ落ちのまま表に出る。

秋人は表に出ると一度振り返って「おばさん、ありがとう。行ってきます」と丁寧にあいさつをした。

こういうところが奥様方の心を鷲掴みにするのだ。
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