犬猫ポリスの恋日常
夜八時。そろそろ、夏祭りのメインイベントである花火が打ち上がる時間。
千歩と秋人は席取りしている見物客を避け、夏祭り会場から少し離れた住宅団地の最上にいた。
古い住宅団地で空き家も多いこの場所は、人もおらず花火もよく見える穴場ポイント。
「知る人ぞ知る……だよな」
「空き家だらけだから人が寄り付かないんだよね」
警察官だからこそできる呑気な会話。
人が寄り付かない空き家団地であってもここから眺める街並みは絶景で、千歩も秋人も地元では大好きな場所の一つだった。
「そろそろ上がるぞ」
「うん」
二人は花火が打ち上がるのを静かに待つ。
しばらくすると、真正面の河川敷からヒューっと花火が上がり、ドーンと大輪の花を咲かせた。