犬猫ポリスの恋日常
まるで別人のようにしおらしくなってしまった男たちに、千歩は書類を持ったまま首を傾げた。
「分かりました……」
千歩は運転していた大柄男から書類の記入をしてもらうと、彼に免許証を返して「気を付けて運転して下さい」と一言添えて解放した。
男たちはペコペコ頭を下げて、脱兎の如く自分の車に戻って走り去っていく。
傍からすれば千歩に挨拶をして去っていったように見えるのだが、挨拶をされた本人は全くそんな感じを得られなかった。
確実に自分以外の誰かを意識していた。
「……」
千歩はぐるりとあたりを見渡した。
不審な気配は微塵も感じられない。
心にモヤモヤを抱えながらもミニパトに戻っていく。
厄介な取り締まりにあたったお蔭でずいぶん時間を食ってしまった。