犬猫ポリスの恋日常
「俺がいなくても平気か?」
「……平気よ」
次の問いの答えはもっと小さな声になってしまった。
でも、仕方ない。
物心ついた頃から千歩のそばには秋人がずっといたのだから。
頭脳明晰、運動神経抜群、高身長、モデル顔負けのルックスを兼ね備えた、まるで非の打ち所がない彼にずっと頼ってきた。
学生時代にはたくさん勉強も見てもらった。
幼い頃からの夢だった警察官になった後だって、何かと言えば秋人に話を聞いてもらうばかり。
これから先のことを思うと、強がりの一つくらい言えなければならないだろう。
「そうか、平気か。ポチが“平気じゃない”って言えば、このまま日本にいようかと思ったのだが残念だ」
秋人が千歩のことを“ポチ”と呼ぶ時は概ねからかっているのだと相場が決まっている。
「嘘つき……」
千歩はそう言って、唇を真一文字に結んだ。