恋しくば
隣で笑う君がすき

菓子折りを忘れてた、と辻本が某有名チョコレート店で何かを買っていた。あたしはその値段を見るのも恐ろしくて店を出ていた。

「なんであたしなの? 百鳥だって美人だし結構真面目な方だと思うよ」

待ち合い室で隣に座って尋ねる。辻本は組んだ足の上で頬杖をついていた。
長い脚ですこと。

「葛野はたまに変なことを言う」
「どこが変なのか明確かつ正確に教えて」
「そもそも同じ人間はこの世にいない」

その前提にあたしは異議を唱える。

「辻本、ドッペルゲンガーを知らないの?」
「知ってるけど、あれは自分が見る幻覚だろう」
「そうなんだ……じゃあ自分以外は見られないんだ」

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