恋しくば
葛野誠という女
夜の仕事で大変なところは、酒に弱いとやっていられないところ。
その点、あたしは本当に恵まれていると思う。
「マコちゃんって地元どこなの?」
先輩のテーブルについて酒を作っていると、隣に座っていたスーツの男に話しかけられた。
にこりと笑顔を作ってみる。
「隣の県ですよ。タガノさんは?」
「俺はねー、雪がめっちゃ降るとこなんだ」
「じゃあ去年とかすごかったんじゃないですか? 近年稀に見る大雪だったって」
「そうそう。マコちゃんて頭良さそうだよね、もしかして大学生?」
どうですかねえ、とはぐらかす。