恋しくば
辻本が黙った。
「まーあれだよね、辻本とは一生縁のない貧乏の話だよ」
「そんなことは、」
「いーって、そんな気遣わなくて。あたしの部屋テレビもないんだし」
キーボードを倍速で打つ。早く終わらせて早く家に帰って眠ろう。
家なんて、布団があれば十分だ。
そんなことを言ったら、辻本に怪訝な顔をされかねないけれど。
今思えば、テレビがないくせに辻本に芸人を勧めてしまった。辻本はもう忘れているだろう。