恋しくば
「い、いいじゃん!? あたしが払うんだから」
「何も言ってない」
「目が言ってた」
「たくさん食べるんだなと思っただけだ」
まるで飼い犬に対するコメント。辻本が肉を注文してくれて、それが届く。あたしより先に辻本がトングを持って焼き始めた。
あたしは二枚の小皿にタレを入れる。
「ありがとう」
「こちらこそ。辻本のそれって、元からなの?」
「それ?」
網の上で油を落としていく肉を見る。焼き肉とか、何年ぶりだろう。
それをひっくり返していく辻本。
「他人の世話焼いちゃうの」
「……そんなに焼いてるか?」