恋しくば
立って座って歩くだけで目を惹く。そんな辻本は、あたしのような庶民にも分け隔てなく接してくる。こういうところも、他人に好かれるポイントなのだろう。
「あれ、今日彼女は?」
「……別れた」
「わかれた?」
「正確には、ふられた。つまらないって」
「またそれか」
「葛野は面白いと思うか?」
「いや、思ったことないけど」
あ、ばっさり言い過ぎた。
少し沈む辻本に続ける。
「辻本を面白いかどうかの視点で見たことなかったから。あんまり冗談とか言わないし」
「冗談を言えば良いのか」
「それは違う」
「違うのか?」
きょとんとする辻本。