恋しくば

百鳥にメッセージを送る前に辻本にぶつかったんだっけ。
あ、と退学届のことも思い出した。

「葛野、身体を起こせるか? 病院へ行こう」
「え、なんで」
「熱がある。病院へ行くべきだ」
「いいよ、眠ってれば治るから」
「じゃあ力づくでも連れて行く」

背中に辻本の腕が入る。ぐっと近づく距離に、「ちょちょちょっと」と声をあげた。
辻本の肩に手を置く。

「待って、少し待とう。まだぐらぐらしてる」
「ぐらぐら?」
「視界が。頭も」

言っている意味が辻本に伝わったのかどうかは分からないけれど、辻本は私の背中から腕を外した。

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