恋しくば
「大学、辞めるのか?」
部屋の中はしんとしていた。それはそうだ、隣が図書館なのだから。
静かな部屋に辻本の声が落ちる。
「……さあね」
「どうして辞めるんだ」
「……言ったって、誰にもどうすることも出来ないよ」
膝を抱いて、そこに顔を埋める。
子供の時は自分を酷く無力だと感じた。大人になったら、何でも出来ると思っていた。
バイトをしてお金も稼げたし、好きな勉強を止める人間もいなかった。
でも、やはり、どうにも出来ないことはこの世には沢山ある。
「こう言ったら葛野は怒るかもしれないが」
辻本が続ける。あたしはそちらを見た。