大人になれなかった君とぼく
「最初はぼくから言うね。ぼくがもし捨てられなかったら、人間ともっと遊びたかったなぁ」
クロは遠い日のことを思い出すように、道の先を見つめました。
「暖かい日には一緒にひなたぼっこしたりするんだ」
「いいね」
言葉にする度に頭の中にその光景が映画のスクリーンのように浮かびます。
「寒い日には一緒にこたつに入って暖まったりしてさ」
「うん」
光景が浮かぶ度にちょっぴり泣きそうになります。
「どこかへお出掛けするなら"いってらっしゃい"って送り出してあげたいし、帰ってきたら"おかえり"って出迎えてあげたい」
「そういうの嬉しいよね」
想いが次々と言葉になって止まりません。
「嬉しいときは一緒に喜びたいし、つらかったり、悲しいときにはそばにいてあげたい。ただ、なんでもない毎日を一緒に過ごしたかった。同じ天国に行くにしても、愛されながら行きたかった。愛してほしかった。たぶん、ぼくは人間と家族ってやつになりたかったんだと思う」
翔太くんは今にも泣きだしそうな目でじっとクロを見つめ、隣で黙って話を聞いています。
「たまにいたずらもするけどね」
そう言うと、クロは明るく笑ってみせました。その時、翔太くんが泣いているのに気づいて驚きました。
「どうして君が泣くの?泣いちゃだめだよ!せっかく楽しくお話ししようって言ってるのに、泣いちゃったら悲しい話になっちゃうよ」
「ごめん。我慢できなかった」
翔太くんは右手の袖で溢れ出た涙を慌てて拭き取りました。その様子を、クロは嬉しそうに見つめています。
「君は、優しいね」
「そんなことないよ。普通だよ」
「ううん、君は優しいよ。ぼくのために泣いてくれる、優しくて、温かい人間だ。そんな人間もいるなんて、ぼくは知らなかった。君のような人間には初めて会ったよ。もし出会ったのが君のような人間だったら、ぼくも幸せになれたのかな……。だとしたら、ぼくは君と家族になりたかったな。君とはもっと早く出会いたかった。こんなとこじゃなくてね」
クロは翔太くんの顔を見上げながら、少し悲しそうに笑いました。翔太くんにはクロが無理に笑っているように見えました。必死に楽しくしようとしているように見えました。
クロは遠い日のことを思い出すように、道の先を見つめました。
「暖かい日には一緒にひなたぼっこしたりするんだ」
「いいね」
言葉にする度に頭の中にその光景が映画のスクリーンのように浮かびます。
「寒い日には一緒にこたつに入って暖まったりしてさ」
「うん」
光景が浮かぶ度にちょっぴり泣きそうになります。
「どこかへお出掛けするなら"いってらっしゃい"って送り出してあげたいし、帰ってきたら"おかえり"って出迎えてあげたい」
「そういうの嬉しいよね」
想いが次々と言葉になって止まりません。
「嬉しいときは一緒に喜びたいし、つらかったり、悲しいときにはそばにいてあげたい。ただ、なんでもない毎日を一緒に過ごしたかった。同じ天国に行くにしても、愛されながら行きたかった。愛してほしかった。たぶん、ぼくは人間と家族ってやつになりたかったんだと思う」
翔太くんは今にも泣きだしそうな目でじっとクロを見つめ、隣で黙って話を聞いています。
「たまにいたずらもするけどね」
そう言うと、クロは明るく笑ってみせました。その時、翔太くんが泣いているのに気づいて驚きました。
「どうして君が泣くの?泣いちゃだめだよ!せっかく楽しくお話ししようって言ってるのに、泣いちゃったら悲しい話になっちゃうよ」
「ごめん。我慢できなかった」
翔太くんは右手の袖で溢れ出た涙を慌てて拭き取りました。その様子を、クロは嬉しそうに見つめています。
「君は、優しいね」
「そんなことないよ。普通だよ」
「ううん、君は優しいよ。ぼくのために泣いてくれる、優しくて、温かい人間だ。そんな人間もいるなんて、ぼくは知らなかった。君のような人間には初めて会ったよ。もし出会ったのが君のような人間だったら、ぼくも幸せになれたのかな……。だとしたら、ぼくは君と家族になりたかったな。君とはもっと早く出会いたかった。こんなとこじゃなくてね」
クロは翔太くんの顔を見上げながら、少し悲しそうに笑いました。翔太くんにはクロが無理に笑っているように見えました。必死に楽しくしようとしているように見えました。