大人になれなかった君とぼく
「ねぇねぇ!他には?もっと聞かせてほしいな。君の話」
「実はさ、俺には夢があったんだ」
「へぇ~!どんな夢?」
「大人になったらテレビゲームをつくる会社に入って、みんなが面白いって言ってくれるような、最高のテレビゲームをつくる。っていうのが、俺の夢だったんだ」
夢を語る翔太くんの目はきらきらと輝いているように見えました。他の誰かに自分の夢を語ったのもこれが初めてでした。
「テレビゲーム好きなの?」
「うん。大好きだった。テレビゲームをしている間だけ、いろいろ忘れることができたから。違う世界へ行けたから。今から思えば、ただ逃げてただけなんだけどね」
「たまには逃げることも必要だよ。難しく言うと、戦略的撤退ってやつさ」
「猫にしては良いこと言うね」
「でしょ?」
クロは左手で髭をなでて、得意そうにしました。続けて、今度は真剣な顔で翔太くんに尋ねます。
「もし、いじめられてなかったら、こんなことしなかった?」
「間違いなくしなかったと思う。言いきれるよ」
いじめっ子の顔が浮かんできて、翔太くんは少しだけ嫌な気分になりました。
「なんでいじめるんだろう」
「面白いからじゃないの。あいつらにとっていじめは遊びの延長なんだよ、きっと。何が面白いのか分からないし、分かりたくもないけどね、俺は」
翔太くんは吐き捨てるように言いました。自分で言って、自分の言葉に腹が立ちました。
「自分がされて嫌なことは相手にもするなって、小さいときに教えてもらえなかったのかな。そんなことでしか仲間と関われないなんて、なんだかかわいそうな人間だね」
「君を捨てたのも、殺したのも人間。とことん嫌になるよ。君も人間嫌いになったでしょ?」
「そんなことないよ。翔太くんをいじめた人間や、ぼくを捨てた人間が悪い人間だったからといって、他の人間全員も悪い人間とは限らない。翔太くんのようないい人間も沢山いる。君と出会って、話して、それが分かった。だから、人間を嫌いになんてならないよ。翔太くんも嫌いにならないで」
いじめっ子を許すことはできない。けど、人間を嫌いになるのはやめよう。翔太くんはクロの言葉で、そう思うことができました。
「そうだね、君の言う通りだ。おかげで最後の最後で人間を嫌いにならずにすみそうだ。ありがとう、クロ」
「ぼくの方こそ君に会えて良かったと思ってる。こんなにも楽しくて、時間があっという間に過ぎるのは初めてだよ。ありがとう、翔太」
二人はお互いの顔を見て、ニコッと嬉しそうに笑いました。いつの間にか二人は友達になっていました。もしかしたら、それ以上の存在に。
「実はさ、俺には夢があったんだ」
「へぇ~!どんな夢?」
「大人になったらテレビゲームをつくる会社に入って、みんなが面白いって言ってくれるような、最高のテレビゲームをつくる。っていうのが、俺の夢だったんだ」
夢を語る翔太くんの目はきらきらと輝いているように見えました。他の誰かに自分の夢を語ったのもこれが初めてでした。
「テレビゲーム好きなの?」
「うん。大好きだった。テレビゲームをしている間だけ、いろいろ忘れることができたから。違う世界へ行けたから。今から思えば、ただ逃げてただけなんだけどね」
「たまには逃げることも必要だよ。難しく言うと、戦略的撤退ってやつさ」
「猫にしては良いこと言うね」
「でしょ?」
クロは左手で髭をなでて、得意そうにしました。続けて、今度は真剣な顔で翔太くんに尋ねます。
「もし、いじめられてなかったら、こんなことしなかった?」
「間違いなくしなかったと思う。言いきれるよ」
いじめっ子の顔が浮かんできて、翔太くんは少しだけ嫌な気分になりました。
「なんでいじめるんだろう」
「面白いからじゃないの。あいつらにとっていじめは遊びの延長なんだよ、きっと。何が面白いのか分からないし、分かりたくもないけどね、俺は」
翔太くんは吐き捨てるように言いました。自分で言って、自分の言葉に腹が立ちました。
「自分がされて嫌なことは相手にもするなって、小さいときに教えてもらえなかったのかな。そんなことでしか仲間と関われないなんて、なんだかかわいそうな人間だね」
「君を捨てたのも、殺したのも人間。とことん嫌になるよ。君も人間嫌いになったでしょ?」
「そんなことないよ。翔太くんをいじめた人間や、ぼくを捨てた人間が悪い人間だったからといって、他の人間全員も悪い人間とは限らない。翔太くんのようないい人間も沢山いる。君と出会って、話して、それが分かった。だから、人間を嫌いになんてならないよ。翔太くんも嫌いにならないで」
いじめっ子を許すことはできない。けど、人間を嫌いになるのはやめよう。翔太くんはクロの言葉で、そう思うことができました。
「そうだね、君の言う通りだ。おかげで最後の最後で人間を嫌いにならずにすみそうだ。ありがとう、クロ」
「ぼくの方こそ君に会えて良かったと思ってる。こんなにも楽しくて、時間があっという間に過ぎるのは初めてだよ。ありがとう、翔太」
二人はお互いの顔を見て、ニコッと嬉しそうに笑いました。いつの間にか二人は友達になっていました。もしかしたら、それ以上の存在に。