不本意ながら同棲してます
ChapterⅠ
出会い
「わぁ、キレイ…!」
真っ赤な夕日がまだほんのり青い空と混じって
幻想的な景色が広がっている。
暖かい風が吹いて桜がふわりと舞う。
手に持っていたプリントの束が散り、紙吹雪の
ようにどこかへ飛んでいく。
「はい、どうぞ」
必死になって集めていると隣にいた男の子が柔
らかく笑い、プリントを差し出してくれた。
見られてはいけないプリントが、男の子の手の
中にあり、慌てて受け取ってお礼を言う。
お願いだから中を見ていませんように。
恐る恐る顔色をうかがうとまた柔らかく笑う。
「どうかしたの?」
そう聞く男の子の顔はどちらとも取れる表情。
「いえ、ありがとうございます」
そう言って会釈をし、足早に去った。
──怪しく笑う男の子。
「へぇー…本を書いてるんだ」
そんな一言も知りもせずに…。
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