不本意ながら同棲してます
ガタンゴトンと大きな音を立てて降りたばかり
の電車が過ぎ去っていく。

この前落としてしまった小説は、昨日無事に投
稿することができた。

名も知らぬ男の子に心の中でお礼を言う。

「あの…」

後ろから聞いたことがある声が聞こえた気がし
て振り返るとあの時の男の子がいた。

「あ、この間はありがとうございました!」

噂をすればなんとやら。
考えれば会えるなんて偶然なのか…。

「もし会えたら声かけようと思ってたんだ」

なんて言う男の子は私に何か用があったのか。
それとも____。

「私に何か用ですか?」

「いや、原稿間に合ったのかなって…」

え…、嘘でしょ…。読まれてたの?

焦る気持ちを落ち着かせようとするが、胸が高
鳴って顔に熱が集まってくる。

「あのっ!なんで…知ってるんですか?…」

そう言うとキョトンとした顔で首を傾げる。

「拾った時にみえたんだけど…ごめんね」

見ちゃだめだったかな、とあざとく首を傾げ
て言うので、わたしの方が謝りたくなる。

なんか、ごめんなさい…

心の中で謝り、男の子に向かって首を降る。

「いえ、ご心配ありがとうございます…」

熱くなった顔の熱を冷ますためにその場を去ろ
うとするとふらりとバランスを崩す。

あ…倒れる

痛みが来ると思いぎゅっと目を瞑ると、思って
いた衝撃はなく、代わりに鼻に残る感覚。

後ろから転けないよう手を引いてくれた様だ。

「大丈夫?」

抱きとめてくれた男の子にもう一度お礼を言っ
て今度こそ、この場を去った。
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