不本意ながら同棲してます
「ごめんね、急に呼び出して!」

昔からの友人である赤崎湊を急遽呼び出して近
くのカフェに連れ込む。

「ほんとに急だな、で?相談ってなんだよ」

軽く深呼吸をして最近起きた事を相談する。

驚いた顔で大きな声をあげるものだから、同
じように私も驚いてしまう。

「なんかさ、その人といるのが日常になって」

「いや、まてまて!どういうこと!?」

状況が分からないと言わんばかりに声を張るミ
ナトに自然と眉が下がる。

どういうことと言われましても、付きまとわれ
て、一緒にいることが当たり前になっていた。

よく考えてみたらおかしいんだよね…
そもそもなんで一緒にいるんだろう。

私に被害がないから、あまりキツく断ったこと
がなかったのがいけなかったのかもしれない。

私にも分からない…とため息をつく。

「で、そいつはどんなヤツなの?」

「…怪しい笑い方で優しそうな人…かな」

今までのイメージを言えばなんだそれ、と笑い
ながらそう言うミナト。

ある程度の相談を終えてカフェを出れば、もう
夕暮れ時で辺りは紅く染まっている。

ぼーっと前を眺めながら歩いていると見覚えの
ある人で思わずあっ、声を漏らして俯く。

気が付かれませんように…

祈るように歩くと、隣にいたミナトがその人に
声をかける。

「お!宮島じゃん!」

予想外の出来事に思わず顔を上げると、目の前
には怪しげな笑みを浮かべる男の子。

ふわりと風が吹いて甘い香りが漂う。

​─────私はこの匂いを知っている

微かに残る記憶のなか。
誰のかは知らない、甘い、甘い、落ち着く香り

"宮島"と呼ばれたその人はどうやらミナトの
友人のようだ。


わたしは、この人を知っている…?
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