元社長秘書ですがクビにされたので、異世界でバリキャリ宰相めざします!
(女傑っていうより、ただのわがままな子供にしか見えないなあ)
十六歳といえば高校一年か二年生、まだまだ子供なので年相応と言えばそうなのだけど。でも彼女はバイエルンの王女でオーストリア帝国大公の妻だ。生粋の王族というものは公の場ではもっとしっかりした顔を見せるものだと思っていた。
まあ、でも。したたかな女傑よりは素直で子供っぽい方がマシかもと胸を撫でおろす。この様子ならとても反メッテルニヒの急先鋒になどなれそうにもないのだから。
(もしかしたらゾフィー大公妃も私の知る史実とは色々違う人物なのかな)
唇を尖らせ拗ねた表情で踊っている少女を眺めながら考えていると、私の隣に立って同じくゾフィー大公妃に注目していたクレメンス様がぽつりと呟いた。
「地頭は良いそうだが、まだまだ未熟だな。子が産まれたら教育は傅母と傅育官に任せた方がいい」
どうやら彼も私と同じ感想を抱いたらしい。けれど、子を取り上げるような真似をするのは少し気の毒ではないかとも思う。
「子供の教育の心配はまだ早いのでは? ゾフィー様はまだお若いですし、これから精神的に大きく成長されるかもしれませんよ?」
私がそう言うと、クレメンス様は少しだけ眉根を寄せながらも舞踏会場の中央を見据えたまま口を開いた。